「ゆめいろリーディングvol.2」から、早いもので1週間が経った。この1週間は、まるで夢の中にいたような心地だった。または、1,000メートルのトラックを走り終えて、まだ惰性で走っているような感じだった。何とも足が地に着かない感覚で過ぎた。

出演者達は、もう既に別現場に合流したり、イベントの準備をしたりと、次に向けて動き出している。こういう時、主催者は、まるで女性にふられた後のような感覚を味わう。昨日までは、あんなにこちらの作品の脚本にぞっこんだった出演者が、1日で心変わりし、次の現場で恋をしている。致し方のないことではあるが、毎度のように寂しさに襲われる。

 

ところで、「ゆめいろリーディングvol.2」であるが、僕自身は実はあまり集客が振るわなかった。「忙しい」「時間がない」と避ける人が多かったのだ。「配信でご覧下さい」と案内しても、はかばかしい返事は得られなかった。以前は足繁く通ってくれて、ちょっとしたお花まで持ってきてくれていた友達も、今回は案内のLINEは「既読スルー」だった。前にも書いたかも知れないが、「もう案内は送ってくれるな」「DVDを見ての感想も言いたくない」と全否定された人には、今回は案内を送っていない。決してDVDや配信を見る物理的な時間がないわけではなさそうだが、僕の作品に割く時間的・精神的余裕がないようだ。

 

数年前まではよく来てくれていたのに、だんだん来なくなってしまうお客様は、悲しいが実は結構いらっしゃる。コロナを機に、あまり外出しなくなった、劇場という閉鎖された空間に来るのが怖い、という方もいらっしゃるだろう。だが、そういう人達の多くは、配信チケットも買っては下さらない。

僕は、この方達は、単に僕の作品に「飽きた」のではないかと考えている。長く1人のアーティストを応援し続けるのは、実は結構難しい。手を替え品を替え表現してはみるものの、余程の魅力がない限りは、一定の期間が来ると飽きられてしまう。10人ファンがいたら、3年後に残っているのは半分くらい、5年後にはその半分…という感じで脱落していくのが常である。その間に、新しいファンがついて、プラマイ0なら上出来だろう。その新しいファンも、やがては1人、また1人と去って行く。理由はいろいろあるだろうが、根底には「飽き」があると思う。

そうでなければ、数年前までは、自分の忙しい予定を何とかやりくりし、時間を作って、差し入れまで持って劇場に足を運んで下さっていた人が、急に「既読スルー」になるはずがない。コロナで間が空いた時、ふと我に返ってみたら、

「あいつの作るものに時間を割く理由は何だろう?…本当はもう飽きていたのに、惰性で通っていただけではないか」

という結論に達してしまったのである。

90年代にあれ程隆盛を極め、一時は「泣く子も黙るプロデューサー」と言われた小室哲哉氏の末路を見れば、それがよく分かる。あちらの場合は、売れた、というか、売れすぎたが故に、似たような楽曲が多くなり、飽きられてしまったのだ。

 

これは、お客様が悪いわけではない。飽きさせてしまった、冷めさせてしまった僕の方の力不足である。そう考えると、何十年というスパンで、第一線で活躍されているアーティストの皆様は、本当にもの凄い存在なのだと思う。そういう人達にも、ファンが入れ替わる時期があるのかも知れないが、それでも長くファンを惹き付けておく魅力があるから、ファンは入れ替わっても、トータルで一定以上は減らないというわけだ。

前回、前々回のブログにも書いたが、「ゆめいろリーディングvol.2」の作品群は、それまでの保邑・獅堂の作ってきたものとは一線を画す。つまり、もし「飽きた」と思っている人が見ても、結構衝撃を受けたかも知れないのだ。それなのに、僕はその人達を、会場に足を運ばせることができなかった。

「どうせまた今まで通りだろう。つまらん」

と思わせてしまったのだ。だから、配信も「別に…」となってしまうのである。

本当に悔しい。

もっともっとたくさんの方に見ていただくべき、そういう価値のあるものを作ったのに、既に飽きられていたとは、痛恨の極みだ。

 

嘆いていても始まらない。

この上は、新しいファンを如何に獲得するかに賭けようと思う。

そこで盛り上げることができれば、「飽きた」と思った人が、「何か違うみたいだぞ」ともう一度足を運んで下さるかも知れない。

僕達の作品を見ることに、もう一度価値を感じて欲しい。

「次は何をしてくるのか?」

という興味を持ち続けてもらえるように、そして、ひとつひとつの活動が、古いファンも新しいファンも惹き付けられるものになるように、いや、それ以前に、「熱い応援」を継続してくれる本当の意味での「ファン」についてもらうために、前回よりは今回、今回よりは次回と、確実に進化していかれるように、ひたすら精進努力していかなくてはならない。

「飽き」との戦いは、想像を絶する厳しさがある。だからこそ、それを制した時、僕達はさらに高みに立っていることだろう。

 

 追記

「ゆめいろリーディングvol.2」の本番の動画を収録した、ツイキャスプレミアのアーカイブ配信は、11272359分までご視聴いただける。

こちらから、是非ご覧になってみて欲しい。 
備考欄に、「獅堂裕希扱い」とお書きいただけると有り難く思う。 

(獅堂裕希)

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(写真 松本和幸)